抗癌剤術後即時単回療法は低リスク例に有効だが、中リスク以上の症例では追加治療が必要とされる。薬剤の違いによる効果の差は証明されておらず、再発リスクは約40%低下し、効果はTURBT施行後1~2年間持続するとされる。合併症として薬剤の血管外漏出がみられるため、広範囲切除例や膀胱穿孔が疑われる例には施行すべきでない。
 一方、抗癌剤膀胱内注入の維持療法については、単回投与に比べ再発予防効果が高い傾向にはあるものの有意差はなく、進展の抑制効果は確認されていない。また、術後補助療法は短期的には再発を抑制するが、進展の予防効果はない。さらに、中リスク例は即時単回療法後に追加の予防治療を要するが、維持療法の有効性は証明されておらず、レジメンも確立されていない。
 このような状況において、近年、もうひとつの膀胱内注入療法であるBCGのエビデンスが蓄積され、その有用性への期待が高まっている。

 1976年、Moralesらが初めてBCGを膀胱内注入療法に用いた。この時、彼らが採用した週1回、6週投与法が現在でも行われている。
 BCGは、筋層非浸潤性膀胱癌の治療においてドキソルビシンよりも高い有効性を持つことが示されている6)。マイトマイシンCとの比較では、低~中リスク例に対するBCGの優位性は証明されていないが、高リスク例においてはBCGのほうが再発・進展抑制効果が優れることが確認されている(エビデンスレベル1)7)
 また、残存TaT1、CIS例では、初回導入療法で完全奏効(CR)が得られなくても、再導入療法により約半数がCRを達成する。BCG不応性CISに対しては3回以上の導入療法による膀胱温存は腫瘍進展の機会を増加させるとして否定的な意見が多い。再導入療法後6カ月までに再発する場合にもBCG不応性と同等に扱うべきという意見もある。


 米国におけるBCG膀胱内注入維持療法の無作為化試験(RCT、SWOG8507試験)では、高リスクのpTaT1、CIS例においては、コンノート株を用いたBCG導入療法単独群に比べ、導入療法に引き続き維持療法を施行した群(導入療法開始から3年間)において有意な予後改善効果が得られた(表28)。特に無再発生存期間中央値は2倍以上に延長し、無増悪生存率にも有意差が認められた。3年間のプロトコール完遂率は16.1%であった。
 また、TaT1、TaT1CIS例におけるBCG膀胱内注入療法の有用性を評価したメタ解析(25の無作為化試験に登録された4,863例、観察期間2.5年)では、BCG注入療法施行群の腫瘍進展リスクは非施行群に比べ有意に37%低下することが示された(進展率:9.8% vs. 13.8%、p=0.001)9)
 これらの知見を含むさまざまな検討の結果を考慮すると、筋層非浸潤性膀胱癌に対するBCG維持療法の標準的スケジュールは確立されていないが、少なくとも1年、場合によっては3年のBCG維持療法が必須なことが示唆される。
 BCG維持療法の問題点は、3年間のプロトコール完遂率は16.1%という数字にみられるように副作用である。BCG維持療法では90%以上に膀胱炎症状がみられ、重篤な有害事象の発現率は約5%とされる。毒性の軽減のためには減量やニューキノロン系抗菌剤の併用が行われる。減量やニューキノロン系抗菌剤の併用による副作用軽減効果に関しては、意見が分かれるところであり、減量すれば全体の有害事象の頻度は低下するが、重篤な全身性の有害事象の頻度に変化はないとの見解もある。また、減量の効果に対する影響としては、用量を調整しても標準用量と有効性に差はないとする知見がある一方で、多病巣病変には標準用量のほうが効果が高いとの報告もある。

 
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