日本では従来、「腎盂・尿管癌」と「膀胱癌」は別個の取扱い規約に分けられていたが、最近、これらを統合した『腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約初版(2011年)』が刊行された。主な改訂点としては、1)前立腺部尿道表在性浸潤・前立腺腺管内進展はT4としない、2)N分類の変更、3)リスク分類に関する記載、4)グレード分類(G1、2、3とhigh/lowの併記の推奨)が挙げられる。また、膀胱癌(CIS・表在性癌)が前立腺部尿道に連続する場合は膀胱癌の進展度に「pu」と付し、膀胱癌(CIS・表在性癌)とは連続しない前立腺尿道部の腫瘍は膀胱癌とは別個の尿道癌とすることが規定された。








 日本におけるBCG膀胱内注入維持療法のRCTとしては、エピルビシン群を対照群とし、コンノート株を用いた導入療法のみの群と維持療法を加えた群を比較する試験(PMCJ-9試験)が実施されている10)。対象症例は表3の通り。
 その結果、BCG群(BCG導入療法群+維持療法群)では、RFS(膀胱内無再発生存期間)がエピルビシン群に対して有意な改善が認められた(図3)。また、維持療法群は導入療法群よりも再発までの期間が有意に延長した(図4)。さらに、再発ハザードを経時的に検討したところ、エピルビシン群では1~2年における再発例が多く、後期の再発もみられたのに対し、BCG導入療法群は1年目前後の再発が低下しており、維持療法を追加すると、早期の再発が抑制され、後期の再発ピークが遅延することが示された(図5)。
 18カ月における治療完遂率は42%にとどまったが、その主な理由は有害事象であった(表4)。軽度の排尿障害や発熱がほとんどだが、Grade 3以上の頻尿の頻度が高かった。頻尿や排尿時痛はGrade 1~2であっても中止の原因となる場合があるため注意を要する。
 一般診療における有害事象対策としては、減量、投与間隔を開ける、薬剤の膀胱内保持時間の短縮などが有効なことがあり、飲水や抗菌薬の適切な使用によって治療中止を回避できる可能性がある。
 コンノート株を用いたBCG維持療法は、本試験で対象となった高リスク例に特に有効なことが示唆されるが、今後は、さらにBCGが有効な患者と無効な患者を明確にするための検討を進めることが重要である。また、低〜中リスク例に対する有用性についても検討が進められることを期待したい。
 本試験で得られた知見は、今後の筋層非浸潤性膀胱癌に対するBCG膀胱内注入療法に関する臨床試験の方向性の決定においても、多大な貢献をするものと期待される。

6)Lamm DL, et al. N Engle J Med 1991; 325: 1205-1209
7)Persad R, et al. European Association of Urology 2008; Supple7: 637-650
8)Lamm DL, et al. J Urol 2000: 163
9)Sylvester RJ, et al. J Urol; 2002: 168
10)Hinotsu S, et al. BJU Int 2011; 108: 187-195

 
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