膀胱癌は、膀胱の尿路上皮粘膜から発生する悪性腫瘍で、病理組織学的には約90%以上が移行上皮癌である。そのうち、表在性癌、すなわち筋層非浸潤性膀胱癌(non-muscle invasive bladder cancer)は約80%を占め、基本的に初期治療として経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)による膀胱温存を目指した治療方針がとられる。
 筋層非浸潤性膀胱癌は、膀胱壁内筋層への深達度によってTis(上皮内癌)、Ta(浸潤なし)、T1(粘膜下結合組織までの浸潤)に分類される。リンパ節転移や遠隔転移はほとんどみられないが、膀胱内腔に異所性に多発する場合や、内視鏡下切除後の膀胱内再発を高頻度に認める。尿路上皮粘膜を有する他の尿路(腎盂、尿管、前立腺部尿道)に病変を合併することが多く、尿路全体の検索が必要である。
 異型度分類は、細胞異型度と構造異型度に基づき3段階(G1、G2、G3)に分けられる。欧米では、乳頭状病変の異型度として、G1を低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(papillary urothelial neoplasm of low malignant potential;PUNLMP)と低グレード癌に、G2を低グレードと高グレード癌に分け、G3を高グレード癌としている。

 膀胱癌罹患の男女比は3:1で、60歳代後半に好発し50歳以上が全体の90%を占める。臨床症状としては、無症候性肉眼的血尿が80%以上を占めるが、50歳以上では顕微鏡的血尿の頻度が高い。約3分の1に膀胱刺激症状(頻尿、排尿時痛、残尿感など)を認め、筋層浸潤癌や上皮内癌(carcinoma in situ;CIS)に伴う場合が多い。

 確定診断は、膀胱鏡や経腹的超音波検査で腫瘍を確認し、TURBTで採取した腫瘍組織を病理学的に確定することでなされる。膀胱鏡上、乳頭状有茎性の腫瘍は筋層非浸潤癌であることが多い。超音波検査は、膀胱腔内に突出する腫瘤影の確認には有用だが、平坦型のCISは検出できない。CISは膀胱鏡でも非特異的な粘膜発赤を認めるのみで、尿細胞診が必須である。



筋層非浸潤性膀胱癌は、病理学的深達度、異型度、併発CISの有無に加えて、臨床的因子である再発頻度(初発・再発と再発間隔)、腫瘍数、腫瘍サイズによって再発と進展のリスク分類がなされる。欧州泌尿器科学会(EAU)のガイドラインに基づくリスク分類では、この6項目の各因子別に再発スコアと進展スコアが定められ、その合計スコアでリスクが決定される。米国NCCNのガイドラインによるリスク分類では、病理学的因子を中心にTa/低グレード群、Ta/高グレード群、T1/低グレード群、T1/高グレード群、Tis群に分類される。

日本泌尿器科学会の『膀胱癌診療ガイドライン(2009年版)』の筋層非浸潤性膀胱癌リスク分類に、欧米の分類を対応させると表1のようになる。また、移行上皮癌はTURBTのみでは5年以内に約60%が再発し、10年以内には約80%が再発する(図1)。そのため、TURBT施行後は、採取された腫瘍の病理解析の結果に基づき、表1のリスク分類に基づく治療が行われる。


 
 
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