膀胱癌罹患の男女比は3:1で、60歳代後半に好発し50歳以上が全体の90%を占める。臨床症状としては、無症候性肉眼的血尿が80%以上を占めるが、50歳以上では顕微鏡的血尿の頻度が高い。約3分の1に膀胱刺激症状(頻尿、排尿時痛、残尿感など)を認め、筋層浸潤癌や上皮内癌(carcinoma in situ;CIS)に伴う場合が多い。
確定診断は、膀胱鏡や経腹的超音波検査で腫瘍を確認し、TURBTで採取した腫瘍組織を病理学的に確定することでなされる。膀胱鏡上、乳頭状有茎性の腫瘍は筋層非浸潤癌であることが多い。超音波検査は、膀胱腔内に突出する腫瘤影の確認には有用だが、平坦型のCISは検出できない。CISは膀胱鏡でも非特異的な粘膜発赤を認めるのみで、尿細胞診が必須である。
筋層非浸潤性膀胱癌は、病理学的深達度、異型度、併発CISの有無に加えて、臨床的因子である再発頻度(初発・再発と再発間隔)、腫瘍数、腫瘍サイズによって再発と進展のリスク分類がなされる。欧州泌尿器科学会(EAU)のガイドラインに基づくリスク分類では、この6項目の各因子別に再発スコアと進展スコアが定められ、その合計スコアでリスクが決定される。米国NCCNのガイドラインによるリスク分類では、病理学的因子を中心にTa/低グレード群、Ta/高グレード群、T1/低グレード群、T1/高グレード群、Tis群に分類される。
日本泌尿器科学会の『膀胱癌診療ガイドライン(2009年版)』の筋層非浸潤性膀胱癌リスク分類に、欧米の分類を対応させると表1のようになる。また、移行上皮癌はTURBTのみでは5年以内に約60%が再発し、10年以内には約80%が再発する(図1)。そのため、TURBT施行後は、採取された腫瘍の病理解析の結果に基づき、表1のリスク分類に基づく治療が行われる。