TURBT施行の際は、1)筋層に至るまで削り取る、2)腫瘍周囲を1~2bite分広く切除する、3)必要に応じて前立腺部尿道の生検を行うことが、根治性の向上や正確な診断・分類のために重要とされる。
 TURBT施行後の膀胱内再発の原因の1つは見落としであり、これをいかに回避するかは極めて重要な課題である(図2)。一方、膀胱内に播種した腫瘍細胞が増殖して顕在化することが基礎研究で示されている。また、腫瘍周辺や別の部位に存在していた可視化されない前癌病変(正常ではないが癌化もしていない細胞)が切除されずに残存し、その後遺伝子変異が起きて新たに腫瘍化するなどの再発メカニズムが考えられている。

 見落としをなくすための工夫として、近年、5-アミノレブリン酸を用いた蛍光膀胱鏡が導入された。事前に蛍光色素(5ALA)を投与すると、腫瘍細胞でのみ5-アミノレブリン酸が蛍光発色型に代謝される。膀胱鏡にフィルターをいれて観察すると膀胱内の腫瘍部分が赤くひかり可視化される。ただし5-アミノレブリン酸は日本では保険で認可されていないため、臨床研究の範疇である。5-アミノレブリン酸を用いた蛍光膀胱鏡の導入で、2年再発率が約15%低下することが報告されている1)。 また、水平方向の周囲粘膜の評価や浸潤、深部断端の評価の精度を向上させる方法としてen-block TURが開発され、成果を上げている。さらに、狭帯域光観察(narrow band imaging;NBI)内視鏡システム補助下の膀胱鏡は、粘膜表層の毛細血管と粘膜微細模様が強調して表示されるため可視化が改善され、腫瘍の早期発見に有用なことが示されている。

 TURBTでは、T1G3病変の数%がunderstaging(筋層浸潤の見落とし)されているとの報告2)3)があり、再度TURを行う(2nd TUR)ことで、より正確な診断が可能となる3)
 2nd TURでは、1)1st TURBTの瘢痕よりもさらに1bite分マージンを確保して切除する(水平方向はさらに広く)、2)筋層を含めて切除する(垂直方向はさらに深く)、3)異常粘膜などの可視病変は生検、切除する、4)全摘術の候補は前立腺部尿道の生検も行うことがポイントとなる。
 緒家の報告をみると、2nd TURを行うと約半数の症例で残存腫瘍が病理学的に診断される。興味深いことに2nd TURを行うと、5年無再発生存率(RFS)が1st TURBTのみの場合に比べ有意に改善することが報告されており(40% vs. 63%、p<0.03)4)、予後が改善される可能性が示唆されている5)
 以上のように、新しい技術を導入したTURBTにより、筋層非浸潤性膀胱癌の診断および治療は著しく改善されてきたが、TURBTだけでは膀胱内再発・進展を完全に防止することはできないことも明らかである。そこで、TURBT施行後の再発を防止して不要な膀胱全摘術を回避するために、抗癌剤あるいはBCGの膀胱内注入療法が行われている。

1)Fibeek, et al. J Urol 2001; 165
2)Miadi M, et al. Eur Urol 2003; 43
3)Jakse G, et al. Eur Urol 2004; 45
4)Grimm MO, et al. J Urol 2003; 170: 433­437
5)Brauers A, et al. J Urol 2001; 165

 
2ページ目へ
3ページ目へ
4ページ目へ
次のページへ
イムシストの詳細は添付文書をご覧ください。 Copyright © 2005-2011 sanofi-aventis K.K. All rights reserved.